2026年8月27日、米国北カリフォルニア連邦地方裁判所は、Anthropicに対する米国防総省の措置を扱った59ページの判決文を提出した。裁判所は、Anthropicのサプライチェーンリスク指定が関連法である10 U.S.C. § 3252に違反し、行政法上も恣意的・気まぐれな措置だったと判断した。同時に、合衆国憲法修正第1条における違法な報復と、修正第5条における事前手続きの保障に関する問題も認めた。
今回の判断を「Anthropicの完全勝利」や「米国政府によるすべての調達制限の解消」へと拡大解釈してはならない点が重要だ。裁判所は、国防総省が望むAIサプライヤーを選択する権利そのものは認めた。問題とされたのは、AnthropicのAI安全に関する立場を理由にサプライチェーンリスク指定を行い、連邦機関だけでなく国防契約業者やサプライヤーとの取引まで制限した方法と範囲である。
主な変化
裁判所が問題視したのは、大統領の指示と国防総省の指示に基づき、連邦機関がAnthropicの技術の使用を中止し、国防契約業者やサプライヤーがAnthropicと取引できないようにした広範な制限だ。判決は、この措置が関連法に適合せず、行政上も十分な根拠を備えていなかったと判断した。
判決の法的判断は、次の3点に整理できる。
- サプライチェーンリスク指定は10 U.S.C. § 3252に違反した。
- 措置は恣意的・気まぐれだった。
- Anthropicに対する措置は修正第1条上の報復に当たり、修正第5条上の事前手続きも不足していた。
したがって今回の判決の核心は、国防総省が特定のAI企業を選択できるかどうかよりも、特定企業の政策的立場を理由に、政府調達網全体に近い制限を課すことができるのかという点にあった。
現在の状況
紛争の背景には、Anthropicが維持しようとした2つの制限がある。1つは米国人を対象とする大規模監視であり、もう1つは完全自律型の殺傷兵器の使用だ。Anthropicはこれらの制限を守ろうとし、国防総省はあらゆる合法的な目的にAIを使用できなければならないと要求した。Claudeをめぐる政府・軍による利用をめぐる議論も、この対立から生じた。
Anthropicは判決を歓迎し、国家安全保障のために政府と建設的に協力していくとの立場を示した。しかし、判決がAnthropicのAI安全政策全体を正しいと宣言したわけではない。裁判所が判断したのは、安全政策の内容すべてではなく、その立場をめぐる国防総省のサプライチェーンリスク指定と、広範な調達制限の法的適正性である。
またAnthropicは、ワシントンD.C.連邦控訴裁判所で、別のサプライチェーンリスク指定事件を進めている。この事件は、民間の政府契約から排除される可能性に関係しているため、カリフォルニア連邦裁判所の今回の判断だけで、政府とAnthropicの調達をめぐる紛争全体が終わったと断定することはできない。
影響
今回の判断が持つ最も直接的な意味は、政府がAIサプライヤーを選択する裁量と、その裁量の行使方法が区別されたことにある。国防総省が望むAIサプライヤーを選択する権利は認められた一方、Anthropicをサプライチェーンリスクに指定し、契約業者やサプライヤーまで幅広く取引から排除した措置には、別途の法的根拠と手続きが求められる。
これは、AIの安全策と国家安全保障を目的とした技術利用が衝突した場合、政府の要求だけで調達制限を正当化できるのかをめぐる事例となった。Anthropicの制限は大規模監視と完全自律型殺傷兵器に集中していたのに対し、国防総省の要求はあらゆる合法的目的での利用を対象としていた。裁判所はこの政策的対立そのものよりも、対立を解消するために政府が取った制裁の法的根拠と手続きを審査した。
したがって、今回の判決だけを根拠にClaudeの政府・軍との契約が直ちに全面再開される、あるいはすべて停止されると解釈するのは難しい。確認された変化は、特定の調達制限とサプライチェーンリスク指定が違法だという裁判所の判断であり、実際の契約や利用範囲は、残る訴訟と政府の今後の措置によって変わる可能性がある。
今回の判決の基準点は「誰がAIを選択できるのか」ではなく、「その選択をどのような根拠と手続きで制限したのか」にある。
次に確認すべき時点
今後確認すべき点は3つある。
- 米国防総省がカリフォルニア連邦裁判所の判断にどのように対応するのか
- ワシントンD.C.連邦控訴裁判所で進行中の別のサプライチェーンリスク指定事件が、民間の政府契約にどのような影響を与えるのか
- Anthropicと政府の協力が、実際の調達・利用範囲にどのような変化をもたらすのか
現在確認されている事実だけでは、今回の判決によってAnthropicに対する米国政府の調達制限がすべて解消されたとはいえない。ただし裁判所は、サプライチェーンリスク指定、広範な取引制限、憲法上の権利、事前手続きの問題を併せて扱い、国防総省の措置の主要部分に歯止めをかけた。今後の法的手続きと政府の対応が、Claudeの政府利用の範囲を見極める次の基準となる。